| 2021/06/05(Sat) 18:34:02 編集(投稿者)
これ多分、田秋さんがニーチェクラブに来られた頃に、みんなで持ち寄った「ツァラトゥストラ」の背後世界に関して語る箇所の和訳。白水社版の和訳の評価が高かった。
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背後世界論者たちについて 『すべての背後世界を創造したもの──それは苦悩と無能力であった。またそれは、最も苦悩している者だけが経験する、あのつかのまの、幸福の狂乱であった。一躍でもって、死の一躍でもって、最後の者に達しようとする疲労、もはや意欲しようとすらしない、或る無気力な無知な疲労、これがすべての神々と背後世界とを創造したのだ。』 (ちくま学芸文庫版よりの引用)
背後世界を説く者たち 『苦悩と無力――それが、すべての背後の世界を作ったのだ。それと、深く苦悩する者のみが知る、幸福へのあのはかない妄想が。ひと跳びで、命がけのひと跳びで究極のものに至り着こうとする疲労感、精根尽き果てたあわれな無知な疲労感、それがすべての神々と背後の世界を創ったのだ。』 (白水社版より引用)
世界の背後を説く者 『悩みと不可能、――それが一切の世界の背後をつくったのだ。そして苦悩に沈湎する者だけが経験するあのつかのまの幸福の妄想が、世界の背後をつくりだしたのだ。疲労はひとっ跳びに、命がけの離れ業で、究極のものに到達しようとする。それだけがもうせいいっぱいの意欲である、このあわれな無知な疲労感、これがすべての神々を生みだし、世界の背後をつくったのだ。』 (岩波文庫版より引用)
背面世界論者 『苦悩と無能――それがすべての背面世界を創り出したのだ。また最も苦悩する者だけが経験するあのつかのまの幸福の妄想が、それらの背面世界を創り出したのだ。ひと飛びで、決死の跳躍で、究極的なものに到達しようと望む疲労感、もはや意欲しない疲労感、それがあらゆる神々と背面世界を創り出したのだ。』 (中公クラシックス版より引用)
背世界者 『苦悩であった。無力であった。――苦悩と無力とがすべての背世界を造ったのである。さらに、苦悩の底に沈湎する者が経験するところの、かの倏怱の間の幸福の妄想、之も与って背世界を造ったのである。一躍もて、死の一躍をもて、最終に到達せんと欲する疲労、また、もはや意欲することを意欲せざるあわれむべき無智の疲労、――之がすべての神々を造り、背世界を造ったのである。』 (新潮文庫版より引用)
大地なき世界を見る者たち 『ほとんど不可能だという思いが、苦悩の種となって――それがあらゆる大地なき世界を作った。最も苦悩する者だけが体験する、あの束の間の幸せをとにかくつかもうとする期待感――それがあらゆる大地なき世界を作ったのだ。未曾有のひとっ跳びで、一度だけの必死の跳躍で、究極のものに達しようとする疲労感、もはや意欲するつもりもなく、知恵に見放された哀れな疲労感、それがあらゆる神々と大地なき世界を作ったのだ。』 (鳥影社版より引用)
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