| 『私の読者に 丈夫な歯と丈夫な胃 私が君にのぞむのはこれだ! そうして君が私の本を消化してこそ、 私と昵懇になれるのは必定! (悦ばしき知識 たわむれ、たばかり、意趣ばらし54)』
『完全な読者というもののイメージを私が思い描いてみるなら、いつもきまって、勇気と好奇心の混じった一個の怪獣になる。さらにまた、何かしやかなもの、狡智に長けたもの、思慮深いものを備えている、生まれつきの冒険家であり発見者でもあるような存在になって来る。とどのつまりはこうである。要するに私がもっぱら誰に向かって語っているかは、かつてツァラトゥストラが次のように言った以上には、私にはどうやらうまく言えそうもない。つまり、ツァラトゥストラはもっぱら誰に向かって自分の謎を語り聞かせようとしているのだろうか。
君たち大胆な探求家たち、実験者たちに向かってだ。狡智の帆を掲げて恐るべき海に乗り出したことのある者たちよ。── 君たちの謎に酔い痴れ、薄明を喜ぶ者たちに向かってだ。君たちは笛の音に誘われてどんな迷いの淵にも誘き寄せられる魂の持ち主だ。 ──君たちは臆病な手で一条の糸を探り探り歩もうとはしない人たちだからだ。 そして君たちは推察することが可能であるような場面に来たら、推論することを憎む人たちばかりだからだ。〔ツァラトゥストラ 幻影と謎〕 (この人を見よ なぜ私はかくも良い本を書くのか3)』
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