| 2021/12/07(Tue) 08:32:22 編集(投稿者)
[19] 毒ヘビのかみ傷について
イチジクの木の下で眠っていたツァラトゥストラは、毒ヘビに頸を噛まれる。 自分が噛んで入った毒によって、死にいたるだろうと毒ヘビはツァラトゥストラに告げたが、ツァラトゥストラは、「おまえは自分の毒を取り戻せ、おまえはそれをわたしに贈るほど豊かではない」というと、毒ヘビは彼の傷をなめた。 というような記述から、この章ははじまっている。 ・・・・・1 のまとめ 『ツァラトゥストラ』ちくま学芸文庫p121〜p122より
まず、この寓話の意味するものについて、訳注も参考にして考えてみる。 訳注p390に、「ひとに呪詛されるのに対して祝福をもって応えるのは、非人間的なことである」というのが『善悪の彼岸』181にあり、という記述がある。 (19-6の解説として)
6には、 ・・・・・ 6 かくて、きみたちに一つの大きな不正が加えられたなら、それに対して、 すみやかに五つの小さな不正を報いよ! 不正をひとりわが身に負って苦しんでいる者は、見るからにおぞましい。 ・・・・・ とあり、
こうしたことから考えると、ヘビの寓話は、 「敵を愛し迫害する者のために祈れ」というキリスト教を背景とする奴隷道徳的な発想と対立する道徳観を表現するものとして出されているのだと思います。
(噛んだヘビが自分の毒による呪いを伝えたのに対して、その行為をただ許すのではなく、自分にとってはなんの効力もないものであることを相手に伝えることにより、報いを与えている。)
後日また内容に入り読んでいく中で変わるかもしれないけれど、現段階ではこのように読んでみます。
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