| 2020/04/18(Sat) 19:58:34 編集(投稿者)
『ペスト』(アルベール・カミュ著 新潮文庫)より引用
リウーは、急に疲れが出てきたような様子で立ち上がった。 「君の言う通りですよ。ランベール君、まったくそのとおりです。ですから、僕は、たとい何物のためにでも、君が今やろうとしていることから君を引き戻そうとは思いません。それは僕にも正しいこと、いいことだと思えるのです。しかし、それにしてもこれだけはぜひいっておきたいですがね――今度のことは、ヒロイズムなどという問題じゃないんです。これは誠実さの問題なのです。こんな考え方は笑われるかもしれませんが、しかしペストと戦う唯一の方法は誠実さということです」 「どういうことです。誠実さっていうのは?」と、急に真剣な顔つきになって、ランベールはいった。 「一般にはどういうことか知りませんがね。僕の場合には、つまり自分の職務を果たすことだと心得ています」 (198頁)
ここではリウーは医師、ランベールは新聞記者。 私の解釈では自分で選んだ職業に責任をもつ、というか自由意志をもつ者の倫理観みたいなものではないか。
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