| 『言及システム』
山下先生はこの概念について、 『基本概念の最後は、「言及システム」である。この概念はマトゥラーナにもヴァレラにもルーマンにも河本にもない。ただし、本書の論述には決定的に重要になるので、ここで詳論しておく。」 とあり、また、以下@【 】の定義文の脚注で、 「これはルーマンが、オートポイエーシス・システムを自己言及的と呼ぶのとはまったく異なる。」 と注意書きをしておられます。
『カントとオートポイエーシス』晃洋書房、山下和也先生著、 p12、13で「言及システム」について、用語としては三つに分けて説明されます。
@オートポイエーシス・システムの自己言及 A一階言及システム B二階言及システム
山下先生の定義を【 】で囲んで、引用します。
@オートポイエーシス・システムの自己言及 【システム全体の作動が一部の構成素に攪乱として反映することと定義する】 つまり自分の作動により自分の構成素に攪乱が起き、
↓
【このとき、自己言及によって特定の構成素に生じた攪乱それ自体をコードとして、まったく別の産出プロセス群が起動し、それがネットワーク状連鎖を生じた上に循環的に閉鎖して閉域を形成したとすると、元のシステムとは異なる、まったく新しいオートポイエーシス・システムが実現することになる。】
↓
A一階言及システム
@を契機に生じた【この新しいシステムを元のシステムの「一階言及システム」と名付けている。このシステムは言うならば、元のシステムの構造のシステム自身への現れを産出するシステムとなる。しかも、相互浸透によってシステムとその環境、すなわちシステムの自己と他者は表裏一体であるため、自己言及はまた他者言及でもある。ところが一階言及システムは、その構成素における現れにおいて、自分の構造の現れを構造の外部の現れから区別してしまう。その上、一階言及システムには元のシステムの構造の現れが自分自身に、構造の外部の現れは自分の外部に見える。実際には、元のシステムとその一階言及システムは別物であるし、元のシステムの構造の現れも元のシステムの構造そのものではないであるが。】
B二階言及システム 【また、一階言及システム自身がさらにその一階言及システムをもつことができ、こちらは元のシステムの二階言及システムということになる。】
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以上で基本概念を説明された箇所の読書を終わります。山下先生は、とりあえず最小限というかんじで大まかに説明されて、後の各々の論述で必要に応じて細かく説明されるようです。
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