| 2021/12/10(Fri) 14:56:28 編集(投稿者)
受講している「西洋哲学の起源」で、ギリシア・ローマ以来の古代哲学がキリスト教と出会い、新たな段階を迎えた西洋の知的世界を代表する教父の世界を概観する、という章があります。そこに興味深い文章があったので紹介します。
アテナイの評議会で使徒パウロの説教で改宗したディオニュシオス・アレオパギーデスの作と信じられ、広く尊重されてきた「ディオニュシオス文書」と呼ばれる一群の著作がある。のちの研究で偽書であることが判明したが、作者・成立については未詳の所が多い。その思想内容はプロクロスの新プラトン主義思想と神の超越へと向かうカッパドキア教父の思想とを色濃く反映している。神の超越性を示すためには、被造的・有限的存在と神との区別を明示する否定的述定の方が肯定的述定よりもふさわしいと説く。『神秘神学』の書においては、精神は認識を絶した沈黙へと至り、あらゆる語りうるものの根底にある語りえないところへ上昇していく、と言う。擬ディオニュシオスの思想は、東方教会の神学を規定し、また西方世界に新プラトン主義が流入するルートとなり、12世紀から14世紀までのスコラ学や神秘思想に深い影響を与えた。 ==============
「否定的述定の方が肯定的述定よりもふさわしい」や「あらゆる語りうるものの根底にある語りえないところ」など示唆に富んだ表現があります。
さっと一読してわかったような気になっても、こうやって一字一字吟味して書いていくと、理解できた!とはなかなか言えなくなります。
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