| パラドックス的な問題について考えたことを残しておこうと思います。
抜き打ちテストのパラドックスのよくある提示 ******* 教師が生徒達に予告した
「来週の月曜日から金曜日のうちのいずれか、君たちが予測できない日に抜き打ちテストを行います。テストは1回だけです。」
これを聞いたある生徒は、以下の推論で「抜き打ちテストは不可能」と結論した。
『もし木曜日まで抜き打ちテストがなかった場合、その時点で、金曜日がテストの日だと予測できてしまう。これでは抜き打ちにならないので、金曜日には抜き打ちテストを行えない。 次に、木曜日に抜き打ちテストがあると仮定すると、水曜日までに抜き打ちテストがなかった時点で木曜日か金曜日のどちらかの日に抜き打ちテストがあると予測できるが、前述のように金曜日には抜き打ちテストできないと分かるので、木曜日が抜き打ちテストの日だと予測できてしまう。よって、木曜日にも抜き打ちテストを行えない。 以下同様に、水曜日、火曜日、月曜日にも抜き打ちテストを行えないと分かる。したがって、「先生はいずれの日にも抜き打ちテストを行うことができない」』
しかし抜き打ちテストは実行され成功した。
(*「抜き打ちテスト」:テストがあるという結論を理屈によって導き予期できる日に行うと「抜き打ち」にならない。それ以外の日に行うものを「抜き打ちテスト」とする)
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この問題について、10年前に三浦俊彦さんの掲示板に以下のような投稿をしていた。
=====(A) 生徒も先生も徹底的に理屈で考えるという前提で、 生徒が仮に、『月曜日しか試験はできないはずだ』と結論する場合、 しかし生徒がそう結論することは先生にも分かるので、抜き打ちにならないので月曜に試験はできない と先生は考える。 しかし、そのことは生徒にも分かり「試験はないな」と考える。 しかしそれならば、抜き打ちができることになる。 しかし それは生徒にも読めるので・・・・
と、ループしてしまうので、結局、生徒が「この日テストがある」と理屈で結論することはできない。 ならば、先生は抜き打ちテストをできる。
そして、この最後の結論は、『テストが必ずある』を意味しないので、ループは生じない。
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三浦さんはこれを「完璧」とし、三浦さんも同様な発想を本に書いていたらしいレスが付いているが、 自分が『月曜日しか試験はできないはずだ』との仮定から始めている理由が今回読んで自分で分からなかった。 数日後にやっと思いついたのは、 生徒の結論が『何曜日か特定できない』とか『試験はない』という結論ならば抜き打ちができる。 抜き打ちできないのは、『試験は〇曜日しかできない→〇曜日に試験がある』と特定される場合。 ところが、その場合にも上記のように試験ができてしまうゆえに、生徒がどのように予測しようとも、抜き打ち試験は必ずできる。そういう趣旨だと思う。
それに気づくまでに、 アップデートするつもりで、別なことを考えた。そもそも最初に『金曜日には抜き打ちできない』と生徒が結論する部分でループが生じるはずだと。
====(B) 推論の最初で生徒が『金曜日には抜き打ちテストをできない』と結論するとき、『まてよ、自分たちがそう考えることは先生にも見抜かれるだろう、すると先生は「テストできないと生徒が判断する金曜日にテストをやれば抜き打ちになる」と考えるだろう。』と気づき『(金曜日は最後のチャンスなので)金曜日にテストが行われる』と考える。しかし、生徒はさらに考える『いや、自分たちがこう考えることも先生に分かる、ならば先生は「抜き打ちはできない」と判断するだろう。』…… このように、テストがあると結論すればテストできない、テストできないと結論すればテストできる、という反転のループが生じるので、生徒は金曜日にテストがあるかどうかについて結論を出せない。したがって金曜日にテストをすれば抜き打ちが成立する。
そして金曜にテストが可能である以上、木曜日に関しては『金曜か木曜のどちらがテストか分からない』ので抜き打ちできる。以下、月〜水も同様で、いつでも抜き打ちテストができる。 ======
ネットを調べたら、詳しい論文がありました。 「金曜日の可能性」清水明 https://cir.nii.ac.jp/crid/1050001202538561664
『抜き打ちテストのパラドックスを、規則に従う行為と予測のパラドックスとして捉えるとき』として
『 規則@ 試験を月曜から金曜までの間に行う 規則A その試験は予測されたものであってはならない 』
の二つの規則を抽出。 この二つが両立できない場合、どちらを優先する取り決めと読めるかによって、考え方が変わってくると。 a 取り決めなし b 抜き打ちできないならテストはしない c 抜き打ちにならなくてもテストは行う
そして、「c 抜き打ちにならなくてもテストは行う」のような条件を明記するケースは見かけないと清水論文は書いている。 で、a か b のパターンが考えられるが、 「a 取り決めなし」の場合は教師の出方を生徒が予期できないので、金曜日にテストがあるかどうか判断できない。結局 月〜金までいつでも抜き打ち可能という。 b の場合が私の(B)の考えに一致。 a,bともに、何曜日でも抜き打ちテストができるという結論は同じだが、ループ的なアンチノミー(清水氏の表現)が抜き打ちに貢献するのは b のみ。
私は、特に条件明記なしの出題から「a 取り決めなし」ではなく「c 抜き打ちできないならテストはしない」のだと解釈していたのだと思う…。
・(A)の「この最後の結論(先生は抜き打ちテストをできる)は、『テストが必ずある』を意味しないので、ループは生じない」は月〜木だけで、金曜の場合は、そこからまたループに入ると思われる。テストできるなら金曜日は必ずやらねばならないので。 ・ネットのブログ記事では、生徒の「先生はいずれの日にも抜き打ちテストを行うことができない」を最終結論としているものが複数あったが、それはPV稼ぎ目的の粗製乱造記事と見なしていいのではないか。問題はその先にあるのだから。
やっぱり三浦さんの本も見てみようと思い、古本注文した。
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