| 社会哲学というべきかもしれないが個性原理というのがある。個と類の関係を示したものであるが、これを初めて世に問うたある書物は注目されることもなく異端の書として黙殺された。その書物によれば個性原理とは「個性的結合は類的対立を同時に引き起こす」というものである。端的にいえば個性の違いを尊重しあう関係では同時に個性の似た者同士で対立が生じるというものだ。市場社会では同質の商品を取り扱う類似企業は対立・競争関係になる。しかし質の異なる商品を扱う企業間に競争はなくむしろ親和的関係である。 「私」という個別的存在が「他我」と共通の類似存在と意識するとたちまち競争・対立関係になり、相手をパージするようになる。ところが相手をまったく異質な存在だとみれば対立は起こらない。フッサールのモナド論は相手が類だから間主観が存在するのだが、まったく違う個性的存在とすれば間主観性は成立しない。そうなると独我論的世界になる。あるいは他我を自己と違う個性的存在とみて親和的な繋がりを認めるようになる。 世の共同存在主流のなかにあって個性的つながりはもっと認められていいのではないか。ポストモダンもそういう志向性だったが失敗だったようだ。なぜかわからないが。 |