| 冨田恭彦先生著 『カント入門講義』ちくま学芸文庫 p257、258より引用します。
冨田先生の解説文の引用です。 『想像と想像力
カントは右の引用箇所で、概念の「構成」を「概念に対応する直観をアプリオリに描き出すこと」と説明していました。 どこに描くかというと、「想像」によって心の中に描く、というのがその一つです。
「想像」というのは、ドイツ語では‘Einbildung’(アインビルドゥング)で、公用語のラテン語では‘imaginatio’(イマーギナーティオー)、これが英語に入ると‘imagination’(イマジネイション)となります。
「イマーギナーティオー」というのは、心の中に‘imago’(イマーゴー、「似たもの」、「像」)を作ることです。 そういう意味の言葉ですから、感覚作用も、それが外的なものになんらかの仕方で対応した像を心の中に作るということから、かつてはそれも「イマーギナーティオー」と呼ばれることがありました。 一七世紀後半に活躍したジョン・ロックも『人間知性論』の一六七一年の草稿の中で「イマジネイション」を感覚に対して使用することがあるのはそのためです。
ですが、そのようなもともとの使われ方と並行して、今私たちが「想像する」と言うときにしばしばそうである、「考えてみる」に近い用法も、行われるようになります。
当面の文脈では、「心の中に像を作ること」として、言い換えれば心の中に「心像」を作ることとして、「想像」という言葉を理解していただく必要があります。 カントが使っているのはドイツ語の「アインビルドゥング」(Einbildung)ですが、その中に含まれている「ビルド」(Bild)はまさしく「像」のことであり、「アインビルドゥング」は「心の中に像を作ること」、あるいはそのようにして作られた「心像」を意味します。
英語の‘imagination’(イマジネイション)は「想像すること」とともに「想像する力」つまり「想像力」をも意味します。 カントが使うドイツ語の場合、「想像力」にあたるのは‘Einbildungskraft’(アインビルドゥングスクラフト)です。』 引用終了
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