□投稿者/ 田秋 -(2024/01/17(Wed) 21:43:10)
| 研究所もいつのまにやらVol.30になりました。
記念して巻頭「西遊記なちゃらかんちゃら」を書きたいところですが、お勉強が忙しくて時間がありましぇん。
それで過去の書き込みの中から読み直して気に入ったものを再掲してお茶を濁します。
■No16800 Re[4]: 伝言板2 からの続き □投稿者/ 田秋 -(2021/09/25(Sat) 21:48:52) 2021/09/26(Sun) 07:25:27 編集(投稿者) (前略) ワーグナーが俳優であるという解釈はNo16218の投稿に引用されている訳注にもあり、その中に 「大衆に賞賛され、媚を売り迎合するワーグナーの姿に失望し絶縁することになる」 とあります。
そこに触れる前に・・・
飯森泰次郎という指揮者がいます。長くバイロイト音楽祭の助手を務め、日本では新国立劇場音楽参与や同芸術監督などをなさっている指揮者です。ま、日本ではワーグナーに最も造詣の深い指揮者ということになっています。 飯森先生がうちのオケに来られ、リハーサルの時 「ワーグナーは夜逃げの名人だった」と仰るのです。どういうことかというと借金を踏み倒すのです。では何故借金をするのかと言うと、オペラ(彼の場合は楽劇)を上演するには莫大なお金がかかるからです。自分の貯金だけでは到底上演できません。パトロンが必要なのです。また劇場建築にも莫大な費用がかかります。 そういうわけで、パトロンやお金持ち貴族には踏み倒したいい訳やら踏み倒してもまた援助してもらうための猛烈なおべんちゃらが必要だったのではないかと思います(ここは、ボクの妄想99%です)。
「お、社長ー、お忙しいでしょうに、よくぞおいでくださいました!いやあ、助かりましたでゲスよ、あん時は。いえいえ、社長にとっちゃほんのはした金にチゲーありませんが、ワチキにとっちゃ大金でさあ。また宜しく頼んますヨ」 「あのソプラノを気に入ってもらえたでゲスか!。なかなかいいでしょ。え?声もいいがお尻もいい?コノコノ、さっすが目のつけどころが非凡でゲスな、大将。今度お酌させますよ」 「これはこれは、皇后さま、いつにも増してお綺麗で。え、ワチキの愚妻?いや、もう皇后さまに比べりゃドブ亀以下でさあ。ひひひ」
ワーグナーがどの程度幇間ぶりを発揮し、どんくらい迎合しまくりだったのかはわかりません。が、役者が舞台が終わった後、楽屋に来たお客に「いや、どうもどうも、よくお出で下さいました。本当にありがとうございます」とか、指揮者がコンサート後に自分のCDを買ってくれた観客と握手して「ありがとうございます」と言いCDにサインするとか。もしも、それさえもニーチェには不純なものに見えていたとしたら、ちょっと潔癖過ぎかな?と思っちゃいます。自分の書いた書物を今は誰も読んでくれなくてもいい!とニーチェは考えていたかもしれませんが、やはり俳優や音楽家は観(み)に、聴きに来てくれてこそ、という思いがあり、そのために愛想よくするのまで「不純だ」と言われると、ワーグナーさんでなくとも「何言ってんだ。青臭すぎるぞ、若造」と言っちゃうような気がします。
お知らせ:飯森泰次郎氏は昨年亡くなられました。
|
|