| NHK 100分de名著シリーズ『カント 永遠平和のために 悪を克服する哲学』 萱野稔人 著 のまとめを引き続きします。
今回は同書p106〜の第三章「人間の悪こそ平和の条件である」から。
前回までに見てきた、平和実現のための三つの確定条項には、補足として二つの追加条項があるそうです。
〇 第一追加条項 永遠平和の保証について
〇 第二追加条項 永遠平和のための秘密条項
第一追加条項は、『永遠平和のために』に通底するカントの世界観が示されているとても興味深い部分だと、萱野さんは書かれています。(p109)
・・・・・ 永遠平和を保証するのは、偉大な芸術家である自然、すなわち〈諸物を巧みに創造する自然〉である。自然の機械的な流れからは、人間の意志に反してでも人間の不和を通じて融和を作りだそうとする自然の目的がはっきりと示されるのである。 ・・・・・ 同書p110より引用 この部分、カント『永遠平和のために』中山元 訳から萱野さんが引用したもの。
この部分を読んで私が感じたのは、カントはわりと楽観的とも取れる観方をするのだな、ということです。 様々な人間が様々な利害関係を生きるのですから、簡単に平和がすぐに世界中に溢れはしないけれど、「自然」の機械的な流れが、人間の不和を通じて逆に融和を作り出そうとするのだ、と語っているのですね。(ここ、私の考え)
ここでカントの言う「自然」というのは、「自然の摂理」などという時の「自然」に近い意味。 また、「自然」という言葉のこうした用法は、ヨーロッパ哲学においてしばしばみられるもので、哲学史においては標準的なものだそうです。(p111より)
「自然」こそが永遠平和を保証する。 人間の「本性=自然」は戦争に向かう傾向性を宿しているが、さらにその傾向性から平和さえも生みだそうとする。 ここが引用文のポイントになるようです。(p111よりまとめ)
人間は自分たちのしてきたことを振り返り省みて、そこからより良く生きていく方策を考え出す能力を与えられています。 争い、戦争というのは、損失が大きくて得にはならないな、というように気づくのも、争い、戦争によって大きな損失を払ってからですね。(ここ、私の考え)
次回に続きます。
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