| NHK 100分de名著シリーズ『カント 永遠平和のために 悪を克服する哲学』 萱野稔人 著 のまとめを引き続きします。
今回も同書p106〜の第三章「人間の悪こそ平和の条件である」から。
永遠平和を保証する「自然」の働きとは、具体的にどういうものか? を今回は見ます。
・・・・・ 自然が暫定的に準備したものとして次の三つの点をあげることができる。 自然は (一)人間が世界のあらゆる地方で生活できるように配慮した。 (二)戦争によって、人間を人をも住めぬような場所にまで駆り立て、そこに居住させた。 (三)また戦争によって、人間が多かれ少なかれ法的な状況に入らざるをえないようにしたのである。 ・・・・・ 同書p112より引用 この部分、カント『永遠平和のために』中山元 訳から萱野さんが引用したもの。
今回は、(三)を見ます。
・・・・・ ある民族に内的な不和がなく、公法の強制に服する必要を感じていない場合にも、戦争が外部からこれを強いることになるだろう。すでに指摘しておいたような自然の準備によって、どの民族も隣接する地のほかの民族に圧迫されることになり、それに対抗する力をもつためには、その民族は内部において国家を形成していなければならないのである。 ・・・・・ 同書p117より引用 この部分、カント『永遠平和のために』中山元 訳から萱野さんが引用したもの。
内部の構造が単純で規模も大きくない社会であれば、その社会が維持されるために強制力が組織される必要はないかもしれないが、外部からの侵略や征服から自らの独立を守るためには、防衛力が必要となる。 防衛力を整備するということは、社会に強制力をもった機関を出現させるということであり、したがって国家を形成せざるをえない。 (p118まとめ)
国家を形成することに成功しなかった民族や社会は結果的に他国の統治のもとに組み込まれてしまっている。 国家からは逃れられないというのが人類史の現実である。 (p118〜p119まとめ)
中央集権的な国家としての機能が明確ではない社会があったとして、その内部で内乱が続いていたとしても、外部からの攻撃、侵略を前にして防衛力(軍)を持つ国家として統一することで、外敵から自分たちを守るという目的のために統一されていく、というようなことだと考えます。(ここ、私の考え)
国家が形成されるためには、人間は道徳的に優れた存在になる必要はない。 それどころか、人間に利己心と自己保存の欲求さえあれば国家は形成される。 このようにカントは考えました。(p121まとめ)
戦争というのは人間の本性に接ぎ木されたかのようである、とカントはかいています。 自分たちの土地以外の地に侵入し、そこを自分たちのものにして支配したい、またその地域と交易することで利益を得たいという人々に対抗するために、より強固な強制力、軍事力を持つ国家は自然に形成されてきたのであり、道徳的に優れているいないの問題ではない、ということ。 相手よりより一層強くなり自分たちが得をしたい、相手を牽制したいと互いが思い合うところに国家が形成されてきた、ということなのですね。 そのためには、国家としての内部は法的に統一されてきた、ということ。 (ここ、私の考え
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