(現在 過去ログ3 を表示中)

TOP HELP 新着記事 トピック表示 ファイル一覧 検索 過去ログ

No24965 の記事


■24965 / )  Re[88]:  ルース・ベネディクトの
□投稿者/ 悪魔ちゃん -(2022/07/18(Mon) 17:49:40)
    今日中にルースのを、

    *************

    10 『菊と刀』の政治性 

    「日本人はアメリカがこれまでに国をあげて戦った敵の中で、最も気心の知れない敵であった。大国を敵とする戦いで、これほどはなはだしく異なった行動と思想の習慣を考慮の中に迫られたことは、今までにないことであった」(ベネディクト1946(1967):5)。そのように「気心の知れない」、行動パターンを読めない「敵」と戦うためには、そして勝利したあかつきにかれらを統治し、占領政策を完遂するためには、かれらの性格や行動の基礎にあるものを理解することが不可欠である(ibid.:5)。このように『菊と刀』は、政治的目的をもって書かれた文書であることをいささかも隠していない。であれば、私たちにとっての課題は、日本を一度も訪れたことのない研究者が書いた「日本論」が、どの点において正確ないし不正確かを議論することでもなければ(川島1950)、ギアツのようにこれを文化人類学の書として救いだすことでもない(ギアツ1988(1996))。私たちが問題にすべきは、文化人類学の本であることと政治的文書であることとはどのようにして両立しうるかを、その内容に沿って尋ねることでなくてはないらないのである。

    『菊と刀』は、冒頭で読者につぎのように謎を投げかける。日本人のように理解しがたい国民が他に存在するか、それほど不可解な人びとをあなたは理解できるのかと、といかけるのである。

    日本人について書かれた記述には、世界のどの国についてもかつて用いられたことのない奇怪至極な「しかしまた」の連続が見られる。まじめな観察者が日本人以外の他の国民について書く時、そしてその国民が類例のないくらい礼儀正しい国民であるという時、「しかしまた彼らは不遜で尊大である」と付け加えることはめったにない。ある国の人びとがこの上なく固陋であるという時、「しかしまた彼らはどんな新奇な事柄にも容易に順応する」と付け加えはしない。・・・ところがこれらのすべての矛盾が、日本に関する書物のたて糸と横糸になるのである。・・・日本人は最高度に、喧嘩好きであると共におとなしく、軍国主義である共に耽美的であり、不遜であると共に礼儀正しく、頑固であると共に順応性に富み、従順であると共にうるさくこづき回されることを憤り、忠実であると共に不忠実であり、勇敢であると共に臆病であり、保守的であると共に新しいものを喜んで迎え入れる。彼らは自分の行動を他人がどう思うだろうか、ということを恐ろしく気にかけると同時に、他人に自分の不行跡が知られない時には罪の誘惑にまかされる。(ベネディクト1946(1967):5−7)

    あいかわらず見事な表現である。日本人の理解不能性を最大限に引っ張ることで、読者が食いついてくることを待つ仕掛けである。ベネディクトはすでに『文化の型』のなかで、他者の文化を印象的に対比させることが、文化に対する関心を読者にかきたてうることを学んでいた。この『菊と刀』においては、対比させられているのは、謎めいた日本人の国民性と、読者にとっては既知のアメリカ人のそれである。しかもここで両者は、ベネディクトの得意とする印象主義的な記述によって、デフォルモされ、誇張された姿であらわれている。日本人とアメリカ人の教育および自己鍛錬の違いについて、ベネディクトが書き分けているところを見て見よう。

    日本では人は上手な競技者となるために自己訓練をする。そして日本人の態度は、ブリッジをする人間と同じであって、全然犠牲の意識をともなわずに訓練を受ける。むろん訓練は厳格である。がしかしそれは事柄の本質に根ざしたことであって、厳格なのが当たり前である。生まれながらの幼児は幸福であるが、「人生を味わう」能力をもたない。精神的訓練…‥を積んで始めて人は充実した生活をし、人生の「味をかみしめる」能力を獲得する。(ibid.:269)

    [アメリカでは]子供は一定の時間がくれば「寝なければならない」。しかも彼は両親のそぶりから、寝ることが一種の抑圧であることをさとる。…‥彼の母親はまた彼がどうしても食べ「なければならない」ものを定める。それはオートミールであることもあるし、ほうれんそうであるあることもあるし、パンであることもあるし、オレンジ・ジュースであることもあるが、アメリカの子供は、彼が食べ「なければならない」食べものに逆らうことを覚える。彼は「からだによい」食べものは、おいしい食べものではないときめてかかる。(ibid.:266-267)

    **********

    10は長いから、このつづきは次に、

    当時の、日本人は、アメリカ人は、っていうことなのかな。

返信/引用返信 削除キー/


Mode/  Pass/

TOP HELP 新着記事 トピック表示 ファイル一覧 検索 過去ログ

- Child Tree -