| 〜〜サピエンス全史の終わりごろに。〜〜
「これはサイエンス・フィクションではない。ほとんどのサイエンス・フィクションの筋書きは、私たちとそっくりのサピエンスが高速の宇宙船やレーザーガンといった優れたテクノロジーを享受する世界を描いている。これらの筋書きの核心を成す理論的ジレンマや政治的ジレンマは、私たち自身の世界から取り出されたもので、未来を背景にして私たちの感情的緊張や社会的緊張を再現しているに過ぎない。 だが、未来のテクノロジーの持つ真の可能性は、乗り物や武器だけではなく、感情や欲望も含めて、ホモ・サピエンスそのものを変えることなのだ。子どもももうけず、性行動もとらず、思考を他者と共有でき、私たちの1000倍も優れた集中力と記憶力を持ち、けして怒りもしなければ悲しみもしないものの、私たちには想像の糸口もつかめない感情と欲望を持ち、永遠に若さを保つサイボーグと比べれば、宇宙船など物の数にも入らないではないか。
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