| 2023/01/21(Sat) 11:59:22 編集(投稿者)
貨幣経済はいわば間接交換である。貨幣という媒介を通して交換を間接的に行う社会的仕組みである。ではなぜ貨幣が発生したかというと、多様な品物の直接交換市場で発生した多角的交換を考察すればよい。すなわち多角的交換の最小原型である三角交換の一辺が切れていく過程を理論的に考察する。 先ず、A,B,Cの三者間でそれぞれがa,b,cの異なった品物を直接交換しているものとする。Aはa品をBのb品と交換し、Aは又Cのc品とも交換している。しかもBはb品をCのc品とも交換している。このような三角交換を原型として多様な品物の多角的交換市場が形成されている。 A,B,Cの三角交換でBとCの間の交換がなくなったとする。というよりもBの所有するb品とCの所有するc品とが直接交換されなくなり、代わってAの所有するa品を通して、BとCの間に取引が行われる形態になったとする。この場合明らかにa品は貨幣的機能を持つことになる。それではなぜb品とc品が直接交換されなくなったのか。さらに検討を加えてみたい。 三者間に均衡状態を仮定してみる。それぞれ交換比率に均衡が見られるとする。たとえばaとbの交換比率をX対Yとし、aとcの交換比率をX対Zとする。三者間が均衡状態にあるとすればbとcの交換比率はY対Zということになろう。そこにおいてはbとcの交換が切れてしまうほどのメリットが見られない。つまり切れるほどの動機がないのである。 ところが不均衡状態を仮定するとその動機が明瞭になってくる。B,C間の取引をY'対Zとする。YとY'は等しくない。従って全体として不均衡状態である。仮にY'のほうがYより大きいとしよう。Bは均衡状態の時よりもY'−Yの分だけ多めに引き渡さなくてはならなくなる。そこに投機的ともいえる動機が形成される。つまりBはY'を支出するよりもAとの取引においてYの支出で、aをX量交換し、そのXでCのZ量を得る方法をとるのである。結果として均衡状態のY対Zの比率と同じことになりBとしてはY'−Yの分だけ得をすることになる。 このように使用価値そのものの消費を目的とせず飽くまで間接的な交換手段として取引されるaを貨幣と呼ぶのである。
|