| 2023/04/08(Sat) 17:05:59 編集(投稿者)
おはようございます、floraさん
時代の最先端で斬新なものを作る人たちは皆アバンギャルドだと言えると思います。例えばべートーベンの「運命」、出だしは「ソソソミーーー、ファファファレーーー」と始まります。ハ短調ですから最初の「ソソソミーーー」はトニックの和音(主和音)、「ファファファレーーー」はドミナントの和音(属和音)です。曲をトニックで始めて(サブドミナントもなく)ドミナントに進むというのはあまりにも単純です。しかしこの出だしは一度聞いたら忘れることはできない、「ジャジャジャジャーーーン」と言えばベートーベン!と言うほどのインパクトがあります。
このような「運命」ですが、さてそれでは何パーセントがベートーベン独自のもので、何パーセントが従来からあったものか?坂本龍一の真意はわかりませんが、或いはそういうことを言っているのかもしれません。
バルトークはバッハの平均律の校訂をしていますし、ストラヴィンスキーは春の祭典などの原始主義の後、「バッハに帰れ」と唱えています。二人ともバッハの音楽を深く研究していたと思いますし、そういう研究の下に彼らの音楽が花開いているのだと思います。
シェーンベルクは12音技法を開発しました。オクターブの12の音を均等に扱うことによって調性感をなくしましたが、これはそれまでの調性音楽の延長にあるものです。 初め3和音(例えばソシレ)があり、その3度上に音を加えることにより7の和音ができ(ソシレファ)、9,11,13の和音ができます。13の和音はソシレファラドミ(ピアノの白鍵全部)が一度に鳴る和音で、作曲家が多彩な音色を求めると同時に調性感も希薄になっていきました。その到達点が12音技法だったと言えます。
シェーンベルクが25歳の時に書いた「清められた夜」には後期ロマン派の究極の美しさがあります。この音楽の延長線上に12音技法があることを考えたとき、シェーンベルクが踏み出した偉大な一歩にはそれを遙かに上回る下支えがあった、ということを坂本龍一は言っているのかもしれません。
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